いざというときに売ったり、貸したり、また、子世代に住み継いでゆける家とはどんな家なのか、長く資産価値を保つ注文住宅の建て方について紹介します。
目次
一戸建ての資産価値とは!? ~土地選び・建て方・メンテナンス~
不動産の資産価値とは「土地の価格」と「建物の価値」の二つ要素から成り立っています。建物は築年数が進むと経年劣化により価値が目減りするのが一般的。木造一戸建ては築20年を過ぎると建物の価値はほぼゼロになると考えられ、土地価格のみで査定されることも少なくなかったです。しかし昨今、不動産仲介現場ではこうした慣行をやめ、家の性能やリフォーム状況を的確に反映した価格をしようという動きも見られるようになってきました。
さらに、住宅メーカー10社で構成する優良ストック住宅推進協議会によって、建物の価値を適正に評価・認定し、良質な住宅を流通させる「スムストック」の取り組みも活発化しています。スムストック査定では、土地と建物に分け、建物に分け、建物の価値は構造、内装、設備を区別して評価を行います。加えて、住まいの履歴データの保存や、長期にわたる点検・補修制度も評価の対象としています。つまり、今後取引される一戸建ての資産価値は建て方やメンテン餡巣も重視されるということです。これから建てる家の、資産価値を保つポイントを詳しく見ていきましょう。
土地編 ポイント①交通・生活至便性と基盤・地形
理想は駅徒歩圏、生活しやすい街を選ぶ
理想は駅から徒歩圏で、電車やバスなどの通勤、通学の非交通手段が十分できるエリア。商業施設や医療、教育、行政施設といった生活するうえで不可欠な要素がそろう街であることも要因になります。「都市部では都に駅からの距離が資産価値に大きく影響します。最近はバス便物件は買い手がつきづらくなっているので、駅徒歩20分までの範囲で探すのが良いでしょう。
地震や大雨など災害リスクの低い土地を選ぶ
一般的に標高が高い台地は、河川の土砂が推積してできた低地に比べ地盤が固いとされ、資産価値の面で有利といわれています。とはいえ、高台エリアの中でも盛土が行われた造成地など、土砂災害のリスクがあったり、周囲から水が集まる『内水反乱』の起こりやすい地形もあります。高台だから大丈夫と考えるのではなく、自治体のハザードマップで災害リスクを確認することが必要です。
土地編 ポイント②広さ・カタチ、土地利用の規制
地域ニーズに合った敷地面積、使いやすいカタチも大事
極端に広い土地や狭い土地は、いざ売却しようとしても購入者が限られ売りづらいこともあります。使いやすい広さとカタチを選ぶことが重要です。例えば、1世帯で車を2台、3台所有するのが当たり前の地域なら、複数台分の駐車スペースが取れる広さは欲しいですよね。都市部と郊外では求められる広さが異なるので、地域の実情に合った広さの土地を確保するようにしましょう。
▽変形地や弊社地の資産価値は?
きれいな四角形の土地に比べ、変形地は価格が抑えられる傾向にありますが、カタチを活かしてうまく建物を建てていればデメリットにはならず、買い手もつきやすいです。一方注意が必要なのは、傾斜や高低差がある土地です。古い擁壁(斜面が崩れるのを防ぐ土留め)は、つくり替えに大きな費用がかかる可能性があり、資産価値の面ではマイナス要因になりやすいです。
▽敷地境界線を明確にしておこう
古い土地では、隣地との境界があいまいなケースもあります。そのままにしておくと将来売却するときや、子どもに相談するときに取引が迅速に行えなくなる可能性もあります!土地家屋調査士などに依頼し、隣接する土地の所有者とともに境界点を確認し目印になる杭=「境界標」を設置しましょう。隣の家との関係性が良好なことも、将来の資産価値維持にもつながります。
建築の法的規制が少ない、活用しやすい土地を選ぶ
土地は法的や条例、地域のルールに定めた建築協定で、建てられる建物の大きさや高さ、用途や構造、形状などにもさまざまな決まりが設けられています。法的な規制が少ないほど、将来的な土地活用の選択肢が広がるため資産価値は落ちづらいと言えます。逆に、規制が多い土地は、建て替えが難しかったり、コストの負担が大きいなど不利になる可能性があります。
▽私道に面した土地は手続きに手間
敷地に接する道路が「私道」で、水道管やガス管が設置されている場合、修理や建て替えの際は私道所有者の承諾を得るのが原則です。私道の中には、所有者が複数いるケースや、相続で所有者不明となっているケースもあるため、手続きに時間がかかることもあります。資産価値の面では不利になりやすいので留意しましょう。
▽最低敷地面積など地域のルールを確認
自治体によっては1区画あたりの最低敷地面積を定めているケースもあります。例えば最低数敷地面積が100㎡の地域の場合、200㎡の土地なら将来2軒に分割して売ることができるが、180㎡の場合は分割ができず1軒として売るしかありません。相応の広さがないとルール上分割ができず、売りずらいこともあるので注意しましょう。
建物編 ポイント③耐震性、耐久&可能性

地震で倒壊しない、強い構造躯体に
建物の資産価値を維持するうえで特に重要なのが「性能」。中でも、安心・安全な暮らしの基本となるのが「耐震性」です。「耐震性能は3段階で評価され、最も低い等級1が現在の建築基準法をクリアする基準レベルです。さらに柱や壁を増やして耐震強度を高めた等級2・等級3の家や、揺れを抑える免震構造や制振装置を取り入れた家は資産価値という点で高く評価されます。
▽耐震「等級3」が目安に
耐震性能の家は、地震保険料の割引率が大きくなるなどの利点があります。なお、「長期優良住宅」の耐震性能の認定基準は2022年時点は等級2でしたが2025年現在等級3になっています。
長持ちする構造躯体&間取り変更が容易な家に
長く住み継ぐには、耐久性のある構造躯体と内装や設備の維持管理や更新、間取り変更が容易にできることもポイントです。こだわりを追及し過ぎると、先々使いにくくなることもあります。できるだけシンプルで汎用性のある間取りにしておくと、後々の変更がしやすく、売却の際は有利です。こだわりの場合は、クロスなど後から簡単に変えられる部分で個性を発揮するのがおすすめです。
▽質の良い家のお墨付き「長期優良住宅」
耐震性や耐久性、維持管理のしやすさ、さらに後述する省エネ性など、長く住み継ぐための条件をまとめて満たす住宅として「長期優良住宅」という任手制度があります。基準を満たした住宅はローン金利やローン控除の優遇などがあることから、最近は新築一戸建ての約4戸に1戸が長期優良住宅の認定を受けています。
建物編 ポイント④断熱・気密、創エネ
将来基準の「等級⑤」以上の省エネルギー性能に
2025年度以降、新築住宅は断熱材の厚さや窓の構造などの基準を満たすことが義務化されます。断熱等性能等級は全7段階で、『等級4』がクリアすべき最低ラインになります。今後は新設された『等級5』がスタンダードになっていくでしょう。適合しない住宅の価値は相対的に低くなると考えられます。中古市場での優位性を保つには、将来の省エネ基準を見越したレベルにしておく必要があります。
▽省エネ性能はローン控除に影響あり
住宅ローンの借入残高の0.7%を一定期間所得税などから差し引く「住宅ローン控除」があります。2024年1月以降は等級4以上が対象でそれに満たない新築住宅はこの制度の対象外となります。中古の場合も、省エネ基準を満たすか否かで控除できる借入限度額に1000万円差がつきます。借入限度額が少ないと、その分、売却時の査定額が抑えられる可能性もあります。
自らエネルギーをつくり、ためて、使える家に
高い断熱性能や高効率設備でエネルギー消費を抑えることに加え、今後さらに必要性が増すのが自らエネルギーをつくる住まいです。国は2030年において新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備などを備えることを目標にしています。災害による停電の備えとして、また、電力ひっ迫による節電が迫られる昨今では、エネルギーをつくり、ためて、使える家が大きな付加価値となり資産価値が高くなるでしょう。
建物編 ポイント⑤居住性、メンテナンス
使いやすい動線や収納、誰もが快適に暮らせる間取り
間取りが使いやすく、快適な住環境であることも資産価値ではプラス要因になります。スムストックの査定では室内を移動するときの経路や水回りの動線が機能的であるかも買主目線でチェックします。収納は延床面積に対する収納面積の比率で評価し、10%異常が最高評価となります。全ての部屋に二方向以上の通風を確保していること、外部化rの視線を遮る工夫もプラスになります。
▽外構などの建物周りも見られる
売却の査定ではほかにもいろいろなポイントが評価対象になります。意外なところでは、庭などの外構。フェンスや門、手入れの行き届いた植栽など、外構に気を配っている家は査定のプラス要因になります。予算の起案系で後回しになりがちな場所だが、建物プランと一緒に計画しておいたほうがのちに資産価値にも繋がる為、覚えておきましょう。
家を長持ちさせる、定期点検と早めの補修
長く住み続けるには、日ごろから家の状態をチェックし、早めの対策が肝心です。スムストックの認定を受けるには、50年以上のメンテナンスプログラムを保有する住宅メーカーの物件であることが前提条件です。長期間にわたり、計画的にメンテナンス体制もしっかり確認しておきましょう。
▽いざというときの保証制度
新築住宅は基礎や柱、床、屋根などの基本構造部分に欠陥が見つかった場合、10年間の和尚が法律で義務付けられています。住宅メーカーでは20年程度の長期間保証も多く、必要な点検・補修を受けることで保証期間を延長できるケースもあります。長期間の保証を受けられることには、買い手にとっても安心材料になり、売却する際のアピールポイントになります。
建物の価値を裏付ける住宅履歴データの保存
建物がどの程度の性能を有し、いつ、どのようなリフォームやメンテナンスを行ってきたかを書類で残し、売却時に買主に提示することは資産価値を保つ有効な手だてとなります。スムストックでは、住宅履歴データが保有されていることが認定の原則になります。新築時や点検、露フォーmなどの維持管理時に蓄積した住宅履歴情報は、建物価値の適正な評価とスムーズな売却につながります。
追記
▽メンテナンスがしやすい建て方に
屋根や外壁の塗り替え、バルコニーの防水恋路など、一戸建ては年月の経過に合わせたメンテナンスが必要不可欠です。だが、建て方や材料の工夫で、補修の頻度を少なくできる場合もあります。例えば、セルフクリーニング機能付きの外壁材や劣化しにくい屋根材など、高機能な建材を取り入れ、庇を深くして外壁の当たる雨を減らし凹凸の少ないシンプルな形にして雨漏りリスクを減らすのも有効です。
まとめ

一戸建て注文住宅は、人生における大きな買い物であり、大切な資産価値があります。その資産価値を維持するためには、土地と建物の両面からの対策が不可欠です。
土地選びは、資産価値を大きく左右する要素の一つです。以下の点を考慮して選びましょう。
- 利便性: 最寄りの駅からの距離、スーパーや病院、学校などの生活施設へのアクセス、公共交通機関の利用状況などを確認しましょう。
- 安全性: 地震や水害などの災害リスクが低い地盤であること、治安が良い地域であることも重要です。ハザードマップを確認したり、過去の災害履歴を調べることも有効です。
- 形状・広さ: 将来的な活用を考慮し、整形地で適切な広さの土地を選びましょう。
- 法規制: 建ぺい率や容積率、高さ制限など、建築に関する法規制を確認し、将来的な建て替えや増築の可能性も考慮しましょう。
- 周辺環境: 近隣の建物や道路状況、騒音などを確認し、住環境が良い場所を選びましょう。
建物の資産価値に関しては、以下の点が重要です。
- 耐震性: 地震に強い構造であることは必須条件です。耐震等級3を取得したり、制震・免震構造を採用することも検討しましょう。
- 耐久性: 長く住み続けられる丈夫な構造であることや、メンテナンスしやすい素材を選ぶことが重要です。
- 省エネ性: 断熱性や気密性が高く、光熱費を抑えられる住宅を選びましょう。ZEH住宅などの高性能住宅も選択肢の一つです。
- 可変性: 将来的な家族構成の変化やライフスタイルの変化に合わせて、間取り変更がしやすい構造であると便利です。
- 快適性: 採光や通風が良く、収納スペースが豊富であるなど、快適な居住空間であることも重要です。
- デザイン性: 将来にわたって飽きのこない、普遍的なデザインであることも資産価値維持につながります。
その他にも、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 定期的なメンテナンス: 定期的な点検やメンテナンスを行うことで、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持することができます。
- 住宅履歴データの保管: 建物の性能やメンテナンス履歴を記録しておくことで、売却時に有利になります。
- 長期保証制度の活用: 長期保証を受けられる住宅を選ぶことで、将来的な修繕費用の負担を軽減することができます。
- 外構: 庭や外構も、建物の印象を大きく左右します。手入れの行き届いた美しい外構は、資産価値を高める要因の一つとなります。
これらのポイントを踏まえ、将来を見据えた家づくりをすることが、一戸建ての資産価値を維持する上で重要となります。