本記事では、長期優良住宅の特徴や認定基準、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
目次
長期優良住宅とは?
長期優良住宅とは、長期間にわたって良好な状態で使用できるように、一定の基準を満たした住宅のことです。2009年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、住宅の長寿命化と環境負荷の低減を目的として制度化されました。
長期間住み続けられる住宅を増やすことで、廃棄物の削減や資源の有効活用を促進し、環境にも配慮した住まいづくりが推進されています。
長期優良住宅の特徴
長期優良住宅に認定されるためには、長期間にわたって住宅を使用するための措置が施されている必要があります。一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」によると、それは以下の5つです。
- 長期に使用するための構造・設備を有していること
- 居住環境に配慮していること
- 一定の住戸面積を有していること
- 維持保全のための計画が策定されていること
- 自然災害への配慮がなされていること
これらの条件をすべて満たした住宅は、所管行政庁に申請を行い、基準を満たしていると認められた場合に長期優良住宅として認定されます。ただし、認定後も「維持保全計画」に基づき、適切な管理を行うことが求められます。
上記のA~Eに関する5つの措置について、長期優良住宅認定制度では10の項目で基準を設けています。次の項目で確認しましょう。
長期優良住宅の認定基準

長期優良住宅の認定基準は、「劣化対策」「耐震性」「省エネルギー性」「維持管理・更新の容易性」「可変性」「バリアフリー性」「居住環境」「住戸面積」「維持保全計画」「災害配慮」の10項目があります。ただし、一戸建てや共同住宅、新築や増改築などによって適用される項目が異なります。
新築一戸建ての場合は、8つの項目で基準を満たす必要があります。表にまとめましたので、概要と主な認定基準について確認してください。
項目 | 概要 | 主な認定基準 |
劣化対策 | 数世代にわたり、住宅の構造躯体を使用するために講じられる措置。 | 劣化対策等級(構造躯体等)等級3が必要で、なおかつ構造の種類に応じた基準を満たす必要があります。例えば木造の場合は、床下空間有効高さの確保や、床下及び小屋裏に点検口を設けることが必要です。
一方、鉄骨造の場合は、柱、梁、筋かいに使用している鋼材の厚さ区分に応じた防錆措置などを行う必要があります。 |
耐震性 | 極めてまれに発生する大規模な地震が起きても、継続的に使用するための改修が容易になるよう、損傷のレベルの低減を図る措置。 | 耐震性の認定基準は、耐震等級(倒壊等防止)等級2以上や、免震建築物などです。耐震等級(倒壊等防止)等級1でも、安全限界時の層間変形を1/100(木造の場合は1/40)以下にしているなど、条件によって基準を満たすケースがあります。 |
省エネルギー性 | 必要な断熱性能などの省エネルギー性能が確保されるために必要な措置。 | 断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6を満たしている必要があります。断熱等性能等級5は熱損失等のより大きな削減のための対策が講じられていること、一次エネルギー消費量等級6は一次エネルギー消費量の著しい削減のための対策が講じられていることを指します。 |
維持管理・更新の容易性 | 構造躯体に比べて耐用年数が短い設備配管について、点検や清掃、補修、更新といった維持管理を容易に行うために講じられる措置。 | 維持管理対策等級(専用配管)等級3が必要です。なお、維持管理対策等級(専用配管)等級3は「特に配慮した措置」のことで、配管がコンクリートに埋め込まれていないなど、躯体や仕上げ材を傷めないで点検及び補修を行うための対策などを指します。 |
居住環境 | 良好な景観の形成や、その他の地域における居住環境の維持・向上に配慮するために講じられる措置。 | 地区計画、景観計画、建築協定、景観協定などの区域内にある場合などは、これらの内容と調和を図ることが求められます。 |
住戸面積 | 良好な居住水準を確保するために、必要な規模を有していること。 | 一戸建て住宅の場合の認定基準は、住戸面積が75m2以上で、1の階の床面積は40m2以上の確保が必須です。ただし、所管行政庁が別に定めている場合はその面積要件を満たすことが必要です。 |
維持保全計画 | 定期的な点検・補修などに関して、建築時から将来を見据えた計画が策定されていること。 | 定期的な点検や補修の対象となるのは、構造耐力上の主要な部分や、雨水の侵入を防止する部分、給排水設備など。また、計画策定だけではなく、計画にのっとって点検を実施することも要件の一つです。 |
災害配慮 | 自然災害による被害の発生の防止、または軽減のために配慮されること。 | 災害発生のリスクがある地域の場合、そのリスクの高さに応じて、所管行政庁が定めた措置を講じることが必要です。 |
以上の8つの項目の認定基準を満たす一戸建てを建てることで、長期優良住宅の認定を受けることができます。
長期優良住宅のメリットは?
長期優良住宅は愛着のある我が家に長く住めることが大きなメリットですが、それ以外にも「税金が安くなる」「住宅ローンの金利が低くなる」といったメリットが多彩に用意されています。詳しく紹介します。
住宅ローンの金利が低くなる
長期優良住宅のメリットの1つ目は、住宅ローンの金利が低くなることです。住宅を取得する際に住宅ローンを利用する方が多いと思いますが、長期優良住宅の場合は住宅金融支援機能が提供する住宅ローン「フラット35」の借入金利が低くなります。
例えば、「フラット35 S(金利Aプラン)」と「フラット35 維持保全型」を併用する場合、借入金利が当初5年間は年0.75%引き下げられます。また「フラット35子育てプラス」を利用する若年夫婦世帯または子ども1人の世帯は、当初5年間は年1.0%の引き下げになります。
一方、長期優良住宅を取得する場合に利用できる住宅ローンが「フラット50」です。「フラット50」の最大の特徴は、返済期間を最長50年まで設定できることです。通常の住宅ローンは35年が最長ですから、返済期間を長くできるため月々の返済額を抑えることができます。生活資金に余裕ができ、子どもの教育費用やレジャー費用などに回すこともできます。
「フラット50」は住宅を売却する際に、借入金利のままで購入者に住宅ローン返済を引き継げるのもメリットです。売却時に借入金を一括返済する必要がないため、売却もスムーズに進められる可能性があります。
このほか、民間の金融機関の住宅ローンを利用する場合も、金利や返済期間が優遇される可能性があります(2024年9月現在)。
税金が優遇される
長期優良住宅には税の特別措置が設けられています。例えば、2025年12月31日までに入居した場合、性能強化費用の相当額(上限650万円)の10%が、その年の所得税から控除できます(投資型減税)。
そのほか、以下のような特例措置があります。
・2024年12月31日までに入居した場合:所得税(住宅ローン減税)
控除対象借入限度額…4,500万円(子育て世帯または若年夫婦の場合は5,000万円)
・2026年3月31日までに新築された住宅:不動産取得税と固定資産税
不動産取得税の控除額…1,300万円に引き上げ(通常1,200万円)
固定資産税の減税措置(1/2減額)適用期間…1~5年間に延長(通常1~3年間)
・2027年3月31日までに新築された住宅の場合:登録免許税
保存登記の際の登録免許税…0.1%に引き下げ(通常0.15%)
移転登記の際の登録免許税…0.2%に引き下げ(通常0.3%)
地震保険料が割引される
地震保険は、住宅の耐震性に応じて割引を受けられる仕組みです。そのため、高い耐震性が認定基準となっている長期優良住宅は保険料が割引されます。
例えば、耐震等級2を有している住宅は割引率が30%、耐震等級3の場合の割引率は50%です。一方、免震建築物の場合は割引率が50%です。
補助金制度の利用ができることもある
長期優良住宅の認定を取得する場合、補助金制度が利用できるケースもあります。「子育てエコホーム支援事業」は、子育て世帯や若者夫婦世帯が省エネ性能を有する新築住宅を取得する際などに活用できる補助金制度で、長期優良住宅は1戸につき100万円を上限に補助が受けられます。
対象のご家庭にはおすすめの補助金制度ですが、2024年は12月31日が申請期限となっています。お早めにお問い合わせください。
また、2023年度までは「地域型住宅グリーン化事業」の補助金を受けることができました(限度額:1戸140万円)。来年度以降に長期優良住宅に関わる補助金制度が新たに創設される可能性もあります。情報をこまめにチェックしましょう。
資産価値が高い
長期優良住宅は、一般住宅よりも資産価値が高いのが通常です。長期優良住宅は劣化対策に関わる措置が取られ、長期間にわたり住むことができるよう配慮されているからです。つまり、同じ築20年の一般住宅と長期優良住宅を比較した場合、一般住宅のほうが老朽化は進んでいると考えられます。
また、耐震性や省エネルギー性なども、一般住宅に比べて高い水準の基準を満たしており、安全面や経済面でも優れています。そのため資産価値が高いのです。
資産価値が高いと、万が一売却する際もメリットがあります。高値で売りやすい、値崩れがしない、価格交渉をされにくいといったことが考えられます。また、子どもや孫に資産価値の高い住宅を残せることもメリットです。
長期優良住宅のデメリットは?
一方、長期優良住宅のデメリットについても確認しましょう。代表的なのが以下の4つです。
申請費用がかかる
長期優良住宅の認定を受けるには申請を行いますが、この際の認定申請の手数料は5~6万円が相場(地域によって異なる)です。
ただし申請手続きは専門的なことも多く、この他に、設計図書作成や代行手数料が発生します。相場は20~30万円となっており、一般的な住宅を建てるのに比べて費用がかかるのはデメリットと考えられます。
着工までに時間がかかる
長期優良住宅は、所管行政庁の確認を得てから着工する流れになります。そのため一般住宅よりも、着工開始時期が遅れるのが通常です。手続きを開始してから着工できるまでに、早ければ2週間程度、遅ければ1カ月以上かかることもあります。
例えば、子どもの新学期に合わせて3月中に引っ越したくても、着工が遅れてしまうと引っ越し時期が遅くなるという事態も考えられます。
建築コストが高額になる
長期優良住宅の認定基準を満たすためには、劣化対策や耐震性の強化、省エネルギー性の確保などを行う必要があります。そのためグレードの高い建材を用いたり、優れた設備を導入したりする必要があり、建築コストは高額になります。
長期間住むため長い目で見ると割安感があり、さらに住宅ローンの金利や税金の優遇もあります。ただし、用意する自己資金が増える可能性を、デメリットに感じる方には向かないでしょう。
定期的に点検を行う必要がある
長期優良住宅の認定基準には「維持保全計画」があり、住宅が完成した後も定期的に点検や補修を行う必要があります。建物は劣化するものですが、計画にのっとって点検し、必要に応じて補修や修繕を行うことで、建物の劣化を遅らせることができるからです。
万が一、計画どおりに維持保全を行わず、適切に保全されていないと判断された場合は、長期優良住宅の認定が取り消されることもあります。
長期優良住宅の認定を受ける流れ

長期優良住宅の認定を受ける際の具体的な流れは下記になります。
- 建築・維持保全に関する計画の作成
長期優良住宅の認定を申請する際には、建築及び維持保全に関する計画(長期優良住宅建築等計画など)を作成する必要があります。申請する前に計画を作成しておきます。
- 登録住宅性能評価機関に技術的審査を依頼
当該住宅が長期使用構造等であるか審査してもらうため、登録住宅性能評価機関に確認申請書または設計住宅性能評価申請書に加え、設計内容説明書、各種図面、計算書などを添付して申請します。
- 審査
登録住宅性能評価機関にて、提出された書類をもとに技術的審査が行われます。
- 確認書の受領
長期使用構造等であると確認された場合、確認書または住宅性能評価書(長期使用構造等であることの確認結果が記載されたもの)が交付され、申請者が受領します。
- 所管行政庁への認定申請
所管行政庁に認定の申請を行います。この際に必要な書類は、登録住宅性能評価機関から交付された確認書などと認定申請書、各種図面、所管行政庁が必要とする書類などです。建築確認審査を同時に行うことも可能です。
- 審査
所管行政庁で、提出された書類をもとに適合審査が行われます。
- 認定通知書の受領
所管行政庁で適合が認められた場合、認定通知書が交付されます。
- 着工
認定通知書を受領したのち、工事が進められます。
- 工事完了報告
工事が完了したら工事報告書を提出して、認定を受けた計画に基づいて工事が完了したことを報告します。
- 所管行政庁による受理、認定
所管行政庁が工事完了報告書を受理し、計画と相違がなければ長期優良住宅として認定されることになります。
工事完了後
工事が完了して長期優良住宅として認定を受けた後も、住宅を長期に渡って優良な状態で使用するために計画的に点検を行う必要があります。長期優良住宅の維持保全期間は30年以上で、工事が完了した後は10年以内ごとに点検を行います。この際、状態に合わせて調査、修繕・改良を行い、良好な状態を維持していきます。
また地震や台風の被害に遭った際に臨時点検を実施するほか、住宅の劣化状況に応じて「維持保全計画書」の内容を見直すことも求められています。
長期優良住宅を検討する際に気を付けたいポイント
まとめ

長期優良住宅は、耐久性や省エネ性能に優れ、長期的に快適に住める住宅として注目されています。メリットとしては税制優遇や資産価値の維持が挙げられる一方、デメリットとしては建築コストの高さや申請手続きの煩雑さがあります。大阪府や大阪市での住宅購入を検討する際には、補助制度の活用や信頼できる業者の選定が重要です。